2003年08月20日第10回 《ためいきの柚子シャーベット》 by kakuzo 【日暮描蔵の厄落としの書き下ろし】梅雨前線が過ぎ去ったとたんに、もう秋雨前線!?夏はどこへ行ったのかと思っていたら、お盆を過ぎてやっと本当の夏がやってきた。冷夏・長雨のせいで、米作が10年ぶりの不作とか。野菜も高いし、元気がない。海の家やビアガーデンもガラガラで、花火大会などのイベントも中止が相次いだという。雨男といわれ続けた私だが、今年の夏のイベントは天候に恵まれた。「やっと日頃の行いの良さが出たかなー」と一人ほくそえんでいると、『えーっ、この異常気象のせいで、神様がきっと間違ったんじゃないの』と失礼ないつもの声。 まだ親の言うことを聞いてくれる下の子に同意を求めてみると、無言のまま虫かごの前でゴソゴソしている。金魚の水槽に網をかけた虫かごの中には、冷夏にもかかわらず子どもが必死で集めた"ガンド"がゾロゾロと。(ちなみに"ガンド"はクワガタの総称で、もちろん方言) 娘と一緒で、もう話を聞かないのかと、もう一度「なんしよーと」と声をかけてみると、やっと「もう山に帰してやると」と小さな声。親に似合わず優しい(?)奴だ。私たちが子どもの頃なら数10匹が、夏休みの宿題で必ず誰かが持ってきていた昆虫標本のエジキとなり、残りのガンドも休み明けに自慢気に持ち寄る子ども達によって悲惨な最期を遂げていたと思う。ま、キットを買って組み立てる今のきれいな工作より、汗をかいて蜂に追われながら完成した、きたない標本のほうがよっぽど価値があるのかな。それはともかく、解き放たれ、夏の楽しい想い出とともに山へと帰っていったガンドたちに、「来年、また来てねー」と重ね重ね親に似合わず優しい(??)奴。 恒例の家族旅行もなく、毛布が手放せなかったこの夏、娘なんか1回もプールへ行かなかったらしい。(まともに話をしてくれないので、聞いたところによるとだが)その割に、私だけはいつもの夏より肌が黒く焼けてしまった。不惑男に真夏の太陽は似合わないが、鏡の前に立つと首から上と腕以外は不気味に白い。そのうえ、「暑くなくても、やっぱ夏はビールだな」と飲みつづけたせいか、お腹のあたりもかなり怪しい。新発売だという柚子シャーベットが、一口目で「んっ!」、二口目で「何!」三口目からは「ハーっ」とため息しか出なくなったのも、ビールの飲みすぎで柚子の味も分かんなくなったんだと反省しきり。「いまいちだった今年の夏とともに、柚子シャーベットの味がため息の中でとけていく―」と分けのわかんないことをしゃべりつつ、ふと隣をみると、美味しいよと勧めた当の本人も、これ以上曲がんないんじゃないかというくらいの、しかめっ面になっている。良かった、まだ大丈夫!ビールの次は芋焼酎だ! 『夏は暑いほうがいいわよねー、アイスも美味しいし、プールにも行けるし、ビールだっていつもより沢山飲めるもんねー』、子どものほうを向きながら話す皮肉な声に反省のかけらもなく、焼けた肌が秋の訪れとともに色褪せていく。やっぱビールの次は芋焼酎だ! |
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