2003年04月20日第9回 《シシカバブ》 by kakuzo 【日暮描蔵の厄落としの書き下ろし】川辺を彩っていた黄色の菜の花から、新しい出会いを飾る桜の時もすぎ、今では薄紫の藤の花が山あいの新緑を美しく演出している。《花の色はうつりにけりないたづらに・・・》と詠った小野小町、平安の世から、移り変わる季節と人の想いは受け継がれているのだろうか。季節はあっという間に春から初夏へと衣替えをしている。子供の生活も卒業から入学へと大きな転機を迎えているが、春に学校に忘れた一学期の通知票(親に似て物忘れがひどいなー) 、夏にはその分まで取り戻せるかな。 春の長雨で散ってしまった桜の花びらに思いを寄せ、雨上がりのぼやけた景色に"春霞か、いいなー!んー?でも何だか目が痛い!"小野小町と一緒に浮世絵の世界に心奪われていた私を、生臭い現実の世界に連れ戻したのは、タバコの煙だった。何でみんなでタバコ吸ってんだよ!「タバコ吸う女は嫌いだ」と、自分が吸わないからって別に女の人が嫌いなわけじゃない(当たり前!!!)が、タバコと女性というイメージがどうしてもつながらない。タバコの煙といえば、薄暗いバーのカウンターで、一人ウイスキーのダブル片手にけだるそうに咥えるタバコ、流れる曲は勿論ジェローム・カーンの"煙が目にしみる"。隣には物静かな細面の長い髪の飾り気のない女性、二人の沈黙を埋めるかのように薄明かりの中でゆっくりと立ち上るタバコの煙。 タバコの話が女性に傾きつつあるが、男でも女でも第一印象はなかなか拭いきれない。人一倍人見知りの私は、外見だけの第一印象がいつまでも払拭できず、フッと目が合ったときのドキドキ感が何度あっても抜けきれない(・・人もいる)女性のイメージで、私にとってもうひとつ重要なもの。"声"。電話やFMから流れてくる優しい女性の声には、見ないでも外見を想像させる不思議な魅力がある。(あくまでもイメージだから現実を見ないほうがいいことが多いが・・・)電話勧誘で簡単に商品購入してみたり、それが正しくないと分かっていても、想像するイメージが固定観念として勝手に行動をおこしてしまう。 いつかは食べてみたい料理に"シシカバブ"がある。これもイメージだけで、現物を見たこともなければ、食べた人の話を聞いたこともない。昔読んだ北杜夫氏の「どくとるマンボウシリーズ」での、とても美味しそうなイメージが未だに忘れられない。多分、大雑把な味付けの串刺しの硬―い肉のような気がするのだが。(違ってたら申し訳ない)何たって、シシカバブ、名前からしてなんとも大胆。本物はぜんぜん違うかも知れないが、ぜひ一度対面してみたい。 珍しく家庭サービスで行った旅行で泊まったホテルで、歯磨きをしようと良く見もせずに小さなチューブ入りの歯磨き粉をブラシにつけ口の中へ。家族の残りを使って、使わない分を持ってかえろうというホテルの誤った使用イメージが悪かったのか、歯を磨きながらチューブを見ていると"SAMPLE"の文字。「ちゃんと金払って泊まってんのに、こんなところで節約しやがって」、でもなんか口の中がモコモコする。あらためて歯磨き粉の(はずの)チューブを裏返すと"FASE WASH"・・・・・!「おまえかよ、変なとこで節約して試供品持ってきてんのは」泡だらけの口を、再び酒で消毒。使わなかった本当の歯磨き粉は、私のイメージ通り、きちんと持ってかえったけど。 最近、まともに話をしてくれない娘のことを、真顔で相談すると「真剣な顔は、あなたのイメージじゃないわねー」人生の半分以上を冗談で暮らしているつけなのか。「いつまでもちっちゃい頃のかわいいイメージ持ってると、すぐに彼を連れてくるわよ。あなたと違って、ちゃんと成長してんですから」って、外出にはちゃんとした洗顔料持ってけよな!!! |
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